
今日は鹿児島県鹿屋市内の中学校にて、
家庭科の先生のためのミシン講習会をおこないました。
少子化の影響で子供たちが少なくなっていることもあり、
学校は、先生も少なくなってきています。
専門がひとつあればよかった時代ではなく、
いくつもの学科をかけもちで教えなくてはならないことも増えてきた。
今日の「授業」は社会科の先生。
事情があり、今年度から家庭科の授業もおこなうことになりました。
授業でミシンを使う時間がある。
自分が使えないものを生徒に教えられるわけがない。
ミシンなんて持ってないしほとんど使ったことがない。
どうしよう!
……というわけで、今回、大隅ブラザーに白羽の矢が立ったわけ。
糸と針の基本的な知識からミシンのセッティングの流れ。
教科書には書いてないちょっとしたコツの積み重ねで、
古いミシンでも気持ち良くソーイングを楽しめること。
当初1時間の予定でしたが気がついたら2時間の講習となりました。
「これからを思うとたいへん気が重いんです」
最初、そう語っていた先生ですが、
「あれ、もしかして、ミシン、ちょっとおもしろいかも」
最後にはそんなふうに思ってもらえたようです。
「子供のころ、母がミシンを使っていたときのようすがよみがえってきました」
そうなんです。
お母さん(お父さん、おばあちゃん、だれでもいいけど)が、
ミシンを使って自分のものを作ってくれたという記憶は、
不思議と子供のなかに残っている。
そんな記憶があると、
いつの日か「自分もミシンを使ってみようかな」と思うことができる。
「三つ子の魂、百まで」ではないですけれど。
くだんの先生も、記憶といまこの瞬間が結びつくことで、
「ああ、そうそう、こんな感じだった!」
これからの自分の授業に期待を持てるなにかを掴むことができたのだと思います。
ぎゃくにいうと、
そういう記憶がないと「ミシンを使う」という発想に向かいにくいかも。
知らないことを、人は、欲することができませんもんね。
「一家に一台。嫁入り道具に」
いま、ミシンはそういう生活必需品ではありません。
「ミシンなんて、持ってないです」そういう家庭がますます増えている。
となれば、学校で出会うのが「はじめてのミシン」ということも多いはず。
それが「最初で最後の出会い」ということも……。
最新鋭の使いやすいミシンが揃っている学校なんて、ありません。
それどころか、
旧式の、あちこち壊れかかっているのをだましだまし使っている。
メーカーも機種もばらばらのラインナップで、
授業に間に合う台数をかろうじて確保している。
そんな学校がほとんどではないでしょうか。
でも、だからこそ、
学校ではじめてふれるミシンで、
せめて「縫うの、なんか、おもしろかった」そんな体験をしてもらえたらいいな。
陸の孤島、過疎化が急激に進む地方の町のミシン屋ですが、
学校のミシンのメンテナンスはもちろん、
ミシンに不慣れな先生方へのサポートもこれからますます考えていきたい。
大隅ブラザー、そんなふうに思っているのです。