ネットオークションミシンのリスク



ネットオークションが出自のミシン修理依頼の場合、
けっこうな割合で、
「知人から譲り受けたミシンなんですけど」と、
入手手段を隠される方が多い。

「オークションなんかで買ったミシンを持ってくるな!」
と門前払いされると思っているのかなあ。
いや、実際、そういうミシン専門店もあるらしいですけどね。

修理対応のできるミシン専門店は、
それなりに経験を積んでいるので、
「あ、このお客さま、なんかウソついてるなあ」
というの、感じてわかってしまうのです。

信頼関係があってこそのやりとりなので、
「オークションで手に入れたものなのですが」
と正直に話していただけるほうが本当はうれしいですね。
入手手段が不具合解決の糸口になることだってあります。

大隅ブラザーはそのへんこだわらないので、
オークション品だろうがなんだろうが、
修理依頼、じゃんじゃん承っております。

ただし、
オークションに出されているミシンは、
「かなりの高率でダメダメなものが多いですよ」とは、
お伝えしておきたいと思います。

ネットオークションに出品されているミシンには、
「動作可」と書いてあったりするでしょう。
でもこの「動作します」と「縫製できる」のあいだには、
広くて深い溝があるのです。

今日、修理依頼で持ち込まれたものなのですが、
上の写真のロックミシン、
10,000円(税別・送料別)で買われたのだそうです。

電源入れてフットコントローラーを踏む。
動かない、断線です。
コードを振ると、かろうじて動くようになる。
でもその動きがたいへん不規則。
注油すると一時は動く、でも、すぐに不規則になり、止まる。
各部のグリスも固まっていて動きが悪い。
糸調子機構もまともなテンションをかけられない。

でもこういう代物が「動きます」と出品されているんですよね。
「クレーム・返品返金不可」と但し書きがついて。

もちろん、
ネットオークションでいい買い物をされて、
すてきなソーイングライフを送っておられる方もたくさんいると思います。
でも、そうでない方が、
ミシン専門店に「修理できるでしょうか」と相談されることが、
増えてきているのはもまた、事実。

修理できるものなら、ミシン専門店は修理します。
でも、修理代はきちんとかかります。
修理できるならまだいいかも。
「修理部品がもう手に入らない」そんなミシンもじつは少なくない。

新品のミシンだって動作確認・試し縫いをしてから買うのが、正道。

低価格のオークションミシンには低価格なりの、
高価格のオークションミシンにも高価格なりのリスクがある。

そのリスクは「一般に想像されている以上に大きい」のですが、
なかなか周知できていないのは、
はい、ミシン専門店の努力不足であることはまちがいない。
まことにもうしわけございません。

田舎の吹けば飛ぶよなミシン専門店。
蟷螂の斧であることは重々承知していますが、
それでも、
今後もきちんとお伝えしていかなければとあらためて思った次第なので。
ひとこと。